今回は空き家の相続放棄について解説したいと思います。よろしくお願いします。
まずは「相続放棄」について簡単におさらいしておきたいと思います。
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相続放棄とは
相続放棄とは「被相続人(亡くなった方)のすべての遺産について相続しない(受け取らない)」というものです。
この相続放棄は自分が相続人であることを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ手続きを行う必要があります。
そして、相続放棄が認められると、元々その方は相続人ではなかった立場となり、煩わしい手続きや借金の支払いなどから逃れられることになります。
ただし、ここで注意が必要なのは相続財産に不動産がある場合には、管理責任が残るということです。
民法940条では次のように定められています。
民法940条
「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」
分かりやすく言いますと、「相続放棄をしても次にその遺産を引き取る人が見つかるまでは、自分の財産のつもりできちんと管理してください。」という決まりがあるわけです。
空家対策法
続いて、空き家と空家対策法の関係について説明します。
平成27年に施行された空家対策特別措置法では次に該当する空き家を「特定空家」に指定しています。
・倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
・著しく衛生上有害となる恐れのある状態
・適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
これらに該当し、立入調査の上、「特定空家」に指定されてしまうと、自治体から管理の方法についての改善指導や勧告・命令を受けることがあります。
さらにその命令に従わないと、最終手段として行政代執行がなされます。
行政代執行
行政代執行とは、例えば空き家に生えている樹木の枝が道路まで伸びて、通行を著しく妨げているような場合に、行政機関が強制的に樹木を伐採するような行為です。
行政代執行がされたときの費用は空き家の所有者に請求されます。
そのため相続放棄をしたからと言って、空き家を放置してもいいわけではなく、近隣に迷惑をかけないよう管理する責任が残ります。
空家と損害賠償
また、空き家を放置した場合に気を付けなければならないのは行政からの指導だけではありません。
それは、放置した空家が倒壊したり、強風で瓦が飛来して近隣住民や通行人がけがしたなどの被害が生じて、損害賠償責任を負ってしまうことです。
空き家の管理不足が原因となって誰かがけがをすれば治療費や入院費用を請求されるおそれがあります。
近年では台風も大型化しています。しかし、自然災害だから仕方ないでは済まされません。適切な管理ができていなかったとなれば、損害賠償を請求されることは大いにありえます。
相続財産管理人の選任
では、相続放棄後に空き家を管理する人が見つからない、遠方に住んでいて適切な管理ができないという場合はどのようにすればいいのでしょうか。
ここからは相続財産管理人について説明します。
相続財産管理人とは、本来、相続人となるべき人に代わって相続財産を管理してくれる人のことです。
相続財産管理人の選任は家庭裁判所に申立て手続きを行う必要があります。
選任された相続財産管理人は空き家の管理を引き継ぎ、売却処分を行います。
売却金からは空き家の管理に使った費用が差し引かれ、最終的に残ったお金は国のものとなります。
相続財産管理人制度利用の留意点
この相続財産管理人制度を利用するには多額の費用がかかることを気に留めておかなければなりません。
まず、家庭裁判所に納める「予納金」がありますが、およそ50~100万円が必要です。ケースによっては100万円以上となることもあります。
予納金とは相続財産管理人が空き家を処分するためにかかる諸々の費用や、相続財産管理人への報酬に使われるお金です。
弁護士や司法書士に相続財産管理人を依頼する場合には、月額1~5万円の報酬が必要です。
空き家解体補助金
以上のように空き家を相続放棄しても管理責任が残り、場合によっては費用負担も高額になることをお伝えしましたが、最後に各自治体が空き家処分に対する補助金制度を設けていますので説明しておきたいと思います。
「老朽危険家屋解体撤去補助金」または「老朽危険空き家解体補助金」などと呼び名は様々ですが、各自治体が空き家の解体費用のおよそ2割から8割を補助する制度を設けています。
利用するための要件は各自治体ごとに定められています。うまく利用すれば少ない費用で空き家を処分することができますので、詳しくは自治体のホームページなどでご確認ください。
以上、今回は空き家の相続放棄について解説しました。
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