贈与税は、原則として贈与された不動産や預貯金など全ての財産に対して課税されます。
ただし、農地については面積も広大であり、莫大な贈与税が課されることによって、譲り受ける人に大きな負担がかかってしまいます。
そのため、経験豊富な先代が元気なうちに農業の基本を受け継ごうと生前贈与を考えていても、躊躇する場合もあります。
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贈与税の納税猶予の特例
そこで、このような事態を考慮して設けられているのが「農地等の贈与に対する納税猶予制度」です。
農業を営むための農地は、所有者を細かく分けてしまうと維持管理が困難となることから、たとえ複数の子どもがいても一人一人に分けることはせず、実質的に農業を引き継ぐ者にまとめて親の代からの農地を譲ることが一般的になっています。
このような農地の生前贈与によって生じる贈与税が、特例によって猶予されているわけです。
農業委員会の許可
農地は食料を供給してくれる大事なものです。
そのため、農地を守ることを目的とした農地法があり、生前贈与や売却、農地以外への用途変更(農地転用)など、農地の権利移動にはいろいろな制約が設けられています。
その一つが、各市町村に設置されている「農業委員会」の許可を受けることです。
農地の贈与や売却を行うには農業委員会の許可が必要で、許可がなければ生前贈与をしたくても名義変更ができません。
農業委員会の許可を必要としないケースもありますが、持ち主が亡くなったときの相続の場合などに限られています。ただし、相続によって農地の持ち主が変わったことの届出はしなくてはいけないことになっています。
特例を受けるための要件
農地の生前贈与で贈与税の納税猶予がされた場合は、贈与者が亡くなるまで贈与税を払わなくてすみます。
この特例を受けるためには次の要件を満たしていなければなりません。
贈与者の要件
贈与者(渡す人)には次の要件があります。
1 農地を贈与した日まで3年以上継続して農業を営んでいた個人
2 これまでに相続時精算課税制度を利用して農地の贈与をしていない
3 対象となる年に他の農地の贈与をしていない
4 これまでに農地贈与の納税猶予が適用できる贈与をしていない
受贈者の要件
受贈者(もらう人)の要件は次のようになっています。
1 贈与者が死亡したときの相続人(推定相続人)の1人
2 次の①~④のすべてに該当して農業委員会に証明された人
①農地を取得した日の年齢が18歳以上
②農地を取得した日まで継続して3年以上農業に従事していた
③農地を取得した日以降、速やかに農業経営を行うこと
④農業委員会が証明するときに担い手(認定農業者など)になっていること
贈与の要件
贈与者と受贈者という人の要件に加えて、どのような形で贈与がされるのかということも聞かれます。下記のいずれかの農地を、推定相続人のうちの農業経営者となる1人に一括して贈与しなければなりません。
1 農地の全部
2 採草放牧地の3分の2以上
3 純農地の3分の2以上
農地は「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」に区分されていて純農地とは一般に宅地の影響を受けない農地のことを言います。
以上の要件を満たし、贈与日の翌年の3月15日までに所定の書類を添付して申請すれば、贈与税の納税が猶予されます。
贈与された農地を他の人に譲ったり、農業をやめた場合は、納税猶予は中止になり、猶予されていた贈与税に加えて利子税を納めなければなりません。
贈与者が亡くなったとき
農地の贈与者が亡くなったときは、贈与された農地は相続したものとみなされ、相続税の課税対象になります。
ただし、相続税についても納税猶予の特例制度が設けられていますので、引き続き農業を営むのであれば税金を納めなくてすみます。
相続税の納税猶予の特例
相続税の納税猶予の特例を受けるためには被相続人、相続人、対象農地についてそれぞれ要件が設けられています。
被相続人の要件
被相続人(亡くなった人)の要件は次のようになっていて、いずれかに該当する必要があります。
1 亡くなる日まで農業をしていた
2 生前に農地を一括贈与した
3 亡くなる日まで営農困難時貸付や特定貸付をしていた
「営農困難時貸付」とは、障がい・疾病などにより農業を続けることが困難となったときに、その農地を他人に貸し付けることです。
「特定貸付」とは、市街化区域外の農地を農業経営基盤強化促進法等の規定に基づく事業により貸し付けることです。
相続人の要件
相続人(受け継ぐ人)の要件は次のようになっています。
1 相続税の申告期限までに農業を引き継ぎ、その後も続ける
2 農地を生前一括贈与されて贈与税の納税猶予の特例を受けていた
3 相続税の申告期限までに特定貸付を行った など
対象農地の要件
特例が適用できる農地での要件は次のようになっています。
1 被相続人が農業を行っていた農地、または特定貸付を行っていた農地である
2 1に加えて次のいずれかに該当する必要があります。
①相続税の申告期限までに遺産分割が済んでいる農地
②贈与税の納税猶予の特例を適用していた農地
③相続があった年に被相続人から生前に一括贈与された農地
以上が、相続税の納税猶予を受けるための要件になっています。またこれらの要件を満たしていても3大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の一部にある農地であったり、相続時精算課税制度を利用して贈与されていた農地は適用対象から外れますので注意してください。
この特例により納税が猶予された相続税は、相続人が農業を続ける限りは支払う必要がありません。そして、相続人が亡くなった場合やさらに子どもに一括贈与した場合には納税が免除されます。
贈与税の納税猶予と同様に、相続人が相続した農地を他人に譲渡したり、農業をやめたときには、猶予が取り消されます。納税猶予されていた相続税と利子税を納めないといけません。
以上、今回は農地の贈与について解説しました。
後継者の方に農業を受け継ぐ強い意志があれば、贈与税と相続税、2つの納税猶予制度をうまく活用することで円滑な農地の承継が可能となります。
農地については、ここで紹介した要件以外にも細かな要件や例外規定がありますので、個々のケースで適用ができるかどうかはご自分で判断せず、専門家や農業委員会などに相談しながら手続きを進めるようにしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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