相続放棄後の管理責任が変わります

今回は、家や土地を相続放棄しても、その後も責任が及んでいた管理義務について、この度の民法改正で変更がありました。

その内容について解説したいと思います。よろしくお願いします。

両親が亡くなって誰も住まなくなった家や耕作しなくなった田畑などを相続したくないからと相続放棄しても、知らぬ存ぜぬという立場になれない場合があります。

それは民法940条の規定があるからです。

現行の民法940条

現行の民法940条の条文です。

民法940条 「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」

これは例えば、父親が亡くなって、その子どもが相続放棄をした場合を想定してみます。

次に第3順位である亡くなった父親の「兄弟」が相続人となった場合、その兄弟の方が財産を管理できるようになるまでは、相続放棄した子どもが管理をしなければなりません。

さらに、その兄弟までが相続放棄をして全員が相続放棄した場合、最後に相続放棄をした人が管理責任を免れるためには家庭裁判所で「相続財産管理人」の選任を申立てる必要があり、相続財産管理人を選任しなければ、管理責任が継続し続けることになります。

現行940条の問題点

この現行940条については、相続人がこれまで全く関与もしてなかった財産にまで管理責任を持たせるのかという問題やいつまで管理責任が続くのか、その期間が曖昧だという問題点が指摘されていました。

そして、管理義務の発生要件や内容が明確でなかったため、相続放棄をしたのにその後も過剰な負担が強いられる場合があり、この点の指摘がありました。

そこでこの度、令和3年の民法改正では940条が次のように改められ、相続放棄をした場合の管理義務のルールが変更されました。

新ルールの施行開始は令和5年4月1日です。

民法・新940条

改正された民法940条の条文がこちらです。

民法・新940条 「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」

管理責任の発生要件

まず、この新940条では相続放棄をした者がどのような場合に管理責任を負うのかが明確になり、「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」とされました。

「占有」とは土地建物が自分の支配下にある状態をいう言葉ですが、分かりやすく言うと、亡くなった父親と同居していて、その子どもが相続放棄をしたにもかかわらず、そのまま父親名義の家に住んでいるような場合です。

ですから、本来相続するはずだった子どもが相続放棄したことによって、たまたま相続人になった亡くなった父親の兄弟が、実際にその家に居住などしておらず、占有状態にもなければ兄弟が相続放棄をしても管理義務は負わないことになります。

管理責任の期間

次に管理責任の期間についてですが、「相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」と明確にされました。

現行法では「相続財産の管理を始めることができるまで」となっていますが、こちらは現行法でも「財産を引き渡すまで」という解釈がされているようですので、内容面での違いはありません。

義務の内容

相続放棄をした者が負う義務の内容です。現行の民法では「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の“管理”を継続しなければならない」とされていますが、改正法では「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を“保存”しなければならない」というように「管理」から「保存」へ表現が変わりました。

表現は変わりましたが、「管理」責任も「保存」義務も実質的な違いはあまりないと思われます。

いずれにしても相続放棄して自分の財産にはならなくても、自分の財産と同じような注意を払って管理・保存する必要があるのは現行法においても改正法においても同様です。

管理義務の程度については「自己の財産におけるのと同一の注意」ということで、新旧の違いはありません。

「自己の財産におけるのと同一の注意」とは「自分のものを管理するとき」のような注意レベルのことで、「他人のものを預かって管理するとき」の注意レベルよりは軽いと考えられています。

適切な管理をしなかった場合のリスク

適切な管理を怠った場合のリスクについて確認しておきます。

損害賠償のリスク

きちんとした管理をしなかったため財産が毀損した場合、債権者が債権回収できなくなる恐れがあります。

また、家屋の壁が倒壊したり、屋根瓦が飛来して通行人などのケガをさせたり、他人の財産を傷つけたりする恐れもあります。

このような場合、相続放棄者の管理責任として、損害賠償請求をされるリスクが生じます。

相続放棄が無効になることも

相続放棄者に管理責任が及ぶからといって、財産を売却したり、長期の賃貸借契約を結ぶことは財産を「処分」したものとみなされます。

「処分」になると相続を承認したものとされ、相続放棄に効果がなくなってしまいます。

以上が管理を適切に行わなかったときに生じるリスクです。

以上、今回は相続放棄後の管理責任の変更点について解説しました。

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