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はじめに
相続手続きを進めるうえで、最初に欠かせないのは「相続財産を正しく把握すること」です。どれだけ遺産分割の話し合いを丁寧に行っても、そもそも財産の洗い出しに漏れがあれば、あとから思わぬトラブルに発展してしまいます。
実際の相談現場でも、「知らない口座があった」「保険金が未請求だった」「古い土地が登記のまま残っていた」など、見落としが原因で再度協議を余儀なくされるケースは少なくありません。今回は、相続で見落としやすい財産と、見落とした場合に起こるリスク、そして防ぐためのチェックポイントを解説します。
見落としやすい相続財産とは?
1. 金融資産
- 休眠口座・定期預金
使っていない口座や、数十年前に作った定期預金が残っていることがあります。通帳やキャッシュカードが見当たらなくても、銀行に問い合わせれば判明するケースもあります。 - 株式・投資信託
証券会社に預けている株や投資信託は、特にネット証券だと家族に気づかれないまま残っていることが増えています。ログイン情報や郵便物を確認しましょう。 - 生命保険
加入していたものの、解約返戻金や保険金を請求していない場合があります。保険会社からの通知や保険証券を確認することが大切です。
2. 不動産関係
- 農地・山林・原野
普段は利用していない土地でも、登記簿に名義が残っていれば相続の対象です。固定資産税の通知や名寄帳で存在を把握できます。 - 未登記建物
古い住宅や倉庫など、登記されていない建物も財産に含まれます。市町村役場で課税台帳を確認することで見つかる場合があります。 - 借地権・借家権
登記に表れない権利もあり、契約書や賃貸借契約の内容を確認することが必要です。
3. その他の財産
- ゴルフ会員権やリゾート会員権
相続人が知らなければ見逃されやすい財産です。 - デジタル資産(暗号資産・電子マネー・ポイント)
ビットコインなどの暗号資産、PayPayや楽天ポイントなども相続対象です。近年、特に注意が必要になっています。 - 貸付金・未収金
親族や知人にお金を貸していた場合の貸付金や、地代・家賃など未収金も財産です。通帳や契約書から確認できます。
見落とすとどんな問題が起こるのか
1. 遺産分割協議のやり直し
相続財産を見落としたまま分割を終えてしまうと、後から新しい財産が見つかったときに再度協議が必要になります。相続人が多い場合や、すでに関係が悪化している場合は、再協議が困難になりがちです。
2. 家族間のトラブル
「誰かがわざと隠していたのでは?」と疑心暗鬼が生じると、家族の関係性に大きな溝を生むことになります。特に金銭が絡む問題は感情的になりやすく、相続争いの火種になります。
3. 税務上のリスク
課税対象となる財産を申告漏れすると、加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。「知らなかった」では済まされず、相続人全員が負担を背負うことになります。
4. 手続きの停滞
未分割の財産が残っていると、不動産の売却が進められなかったり、預金が引き出せなかったりします。日常生活に支障が出るケースも珍しくありません。
見落としを防ぐためのチェックポイント
- 通帳やキャッシュカードを確認する
複数の金融機関に口座を持っている可能性があります。 - 固定資産税の通知書や名寄帳を整理する
不動産の所在や課税対象を確認できます。 - 保険証券や契約書を見直す
生命保険や借地権など、契約に基づく財産を把握できます。 - 郵便物やパソコン・スマホを確認する
電子取引やデジタル資産の手がかりが見つかる場合があります。 - 専門家に相談する
自分だけで探すのが不安なら、行政書士や税理士などに依頼するのが安心です。
まとめ
相続手続きで一番避けたいのは「見落としによるトラブル」です。財産を正しく把握できれば、相続人全員が納得し、安心して次の世代に財産を引き継ぐことができます。
そのためには、金融資産や不動産だけでなく、保険、デジタル資産、会員権といった「意外な財産」も忘れず確認すること。そして、不安を感じたら早めに専門家へ相談することが重要です。
相続は一人で悩むものではありません。専門家のサポートを得ながら、見落としのないスムーズな相続を実現しましょう。