こんにちは。行政書士の山岡正士です。
「親が亡くなったけれど、相続手続きをどう進めたらいいのか分からない」
実際にご相談を受けていると、このようなお悩みを抱えている方がとても多いと感じます。
相続手続きは一生のうちに何度も経験するものではありません。だからこそ、分からないことや戸惑うことがあって当然です。特に次の3つは、多くの方が「困った」と口にされる代表的なポイントです。今回はそれぞれの内容と、解決のためのヒントを詳しくお伝えします。
1. 相続人の確定が大変
1-1 戸籍謄本をすべて集める必要がある
相続手続きの第一歩は「相続人の確定」です。亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍を揃え、そのつながりを確認する必要があります。
例えば本籍地が転籍していれば、複数の市町村役場に戸籍を請求しなければなりません。昭和や平成初期の時代に紙の戸籍からコンピュータ化に切り替わった場合もあり、「除籍」「改製原戸籍」など複数種類の戸籍を集めることになります。
1-2 相続人が多い場合や面識がない人がいる場合
兄弟姉妹や甥姪までが相続人になるケースでは、20人以上の相続人が存在することもあります。面識がない親族に連絡を取る必要が出てきたり、海外に居住している相続人がいたりすると、さらに難航します。
1-3 解決のヒント
戸籍の収集や相続人調査は、行政書士が代理で行うことができます。専門家に依頼することで、取得漏れや誤解を防ぎ、スムーズに次の手続きに進むことが可能です。
2. 相続財産の把握が難しい
2-1 預貯金や不動産だけではない
相続財産というと「銀行預金」と「土地・建物」を思い浮かべる方が多いでしょう。もちろんこれらは代表的な財産ですが、実際にはそれ以外にも多様な財産が相続の対象となります。
- 昔の定期預金や休眠口座
- 証券会社に預けている株式・投資信託
- 生命保険の解約返戻金や未請求の保険金
- ゴルフ会員権やリゾート会員権
- 最近では暗号資産(ビットコインなど)
2-2 見落とすとどうなる?
財産を見落としたまま遺産分割協議をしてしまうと、後から「実はこんな財産があった」と判明し、協議をやり直さなければならないことがあります。これは相続人同士のトラブルに発展する大きな原因の一つです。
また、相続税の申告で財産を漏らしてしまうと「申告漏れ」とされ、追徴課税を課されることもあります。
2-3 解決のヒント
固定資産税の納税通知書、通帳やキャッシュカード、保険証券などを一つ一つ確認することが大切です。最近では「お金の流れがデジタル化」しているため、ネット銀行やネット証券も忘れずに調べましょう。専門家に依頼すると、財産調査のためのチェックリストを活用し、漏れを防ぐことができます。
3. 相続人同士の話し合いがまとまらない
3-1 不動産が分けにくい
相続財産の中でもトラブルになりやすいのが不動産です。土地や建物は「現物分割」が難しいため、誰が引き継ぐかで揉めるケースが多くあります。
例えば「長男が親の近くでずっと面倒を見てきたから不動産は長男に譲るべきだ」という意見と、「それなら金融資産を多めに欲しい」という他の相続人の意見が対立する、といったケースです。
3-2 感情の対立に発展することも
相続は単なる財産のやり取りではありません。親への思い、日頃の感謝や不満、兄弟姉妹間の関係性が表に出てくる場でもあります。そのため「公平さ」をめぐって感情的に対立し、関係がこじれてしまうことも少なくありません。
3-3 解決のヒント
遺産分割協議は法律的に有効な合意を作る場です。冷静な話し合いをするために、第三者である専門家に同席してもらうことが有効です。行政書士は遺産分割協議書を作成し、合意内容を文書化する役割を担います。
まとめ:困ったときは専門家に相談を
相続手続きで多くの方がつまずくポイントは、
- 相続人の確定が大変
- 相続財産の把握が難しい
- 相続人同士の話し合いがまとまらない
この3つに集約されます。
相続は法律的な知識と同時に、家族関係や感情の調整も必要になるため、想像以上に大変な作業です。しかし、ポイントを押さえて準備を進めれば、スムーズに解決することも可能です。
「どうしたらいいのか分からない」「話し合いが進まない」と悩んだときは、一人で抱え込まずに専門家へ相談してみてください。
当事務所では、相続人調査から財産の確認、遺産分割協議書の作成まで、ワンストップでサポートしています。相続は一度きりの大切な手続きです。ぜひ安心してご相談ください。
✅ 相続手続きで困ったときに役立つチェックリスト
相続手続きは一度きりでやり直しがきかないため、抜け漏れを防ぐことが大切です。次のチェックリストを活用してみてください。
1. 相続人の確定チェックリスト
- 被相続人の 出生から死亡までの戸籍 をすべて取得した
- 除籍謄本・改製原戸籍なども漏れなく揃えた
- 相続人全員の現在の戸籍を確認した
- 海外や遠方に住む相続人の住所・連絡先を把握した
- 代襲相続(相続人が先に亡くなっている場合)の有無を確認した
2. 相続財産の把握チェックリスト
- 銀行・信用金庫などの 預貯金 を調査した
- 自宅や土地などの 不動産 を固定資産税の納税通知書で確認した
- 証券会社にある 株式・投資信託 を確認した
- 生命保険の契約・解約返戻金・未請求保険金を調べた
- ゴルフ会員権・リゾート会員権の有無を調べた
- 暗号資産(ビットコイン等)の口座を確認した
- 借金・ローンなどマイナスの財産も確認した
3. 遺産分割協議の準備チェックリスト
- 相続人全員が連絡を取り合える状態になっている
- 各財産の評価額を把握している
- 不動産の利用状況や将来の維持費について意見を整理した
- 協議の内容を文書化(遺産分割協議書)する準備がある
- 専門家(行政書士・司法書士・税理士など)に相談する体制を検討している
4. 相続税・手続き期限チェックリスト
- 相続税の申告期限(相続開始から 10か月以内)を把握している
- 準確定申告の期限(相続開始から 4か月以内)を確認した
- 銀行口座の凍結解除や不動産名義変更の必要書類を揃えている
- 不動産登記の期限に注意している
まとめ
このチェックリストを使えば、相続手続きで「抜けがないか」を確認することができます。特に戸籍の収集や財産の調査は時間がかかるため、早めに着手することが大切です。
専門家に相談すれば、書類の取得や協議書の作成を任せられるので、安心して進められます。